産業保健調査研究

主任研究者 香川産業保健推進センター 所長 影山 浩
共同研究者 香川産業保健推進センター 相談員 武田 則昭
山田 定

1.はじめに

 10年のスパンでふりかえると、産業現場の安全衛生面の改善、産業衛生スタッフの充実はすばらしい。 香川県のように大企業の少ない地方でも、この進歩はあきらかであり、産業医としての自覚を持ち、積極的な活動をすすめている嘱託産業医が急速に増加している。
 産業医活動は産業医と現場との相互の関連性の中で成立し、発展するものであり、今回の調査は産業医、産業看護職、衛生管理担当者の三者について、実情の認識、考え方、将来への展望に関してアンケート調査を行った。
 また、その調査によって浮き彫りにできた問題点について、解決策を現場でどのようにとらえているかを把握する目的で追加調査を行った。 調査結果のなかで、興味ある2-3の問題について報告する。

2.調査方法

 香川県には従業員50人以上の事業所が約1,000社あり、それぞれに衛生管理者と産業医が配置されている。産業看護職は約100名が活動している。
 香川県下の現状を把握するためには、それらのすべて、あるいは無作為に抽出された対象にアンケートを求めるべきである。 この調査票について、研究者の間で若干の意見の相違があった。事業所によっては名ばかりの産業医、名ばかりの衛生管理者がまだかなりの数で存在することが推定される。 そのような名ばかりの産業医、衛生管理者へのアンケート調査は、アンケートの内容に微妙な問題を含むほど、その精度について問題が生じるであろう。熱意のある衛生管理者、 熱意のある産業医の比重を高めたアンケートを実施すべきであるという主張と、香川県下の現状を把握するには無作為にえらんだ対象とすべきであるという意見の対立である。
 結論として、医師会の認定産業医と、かがわ衛生管理者のつどいに参加している衛生管理者には全員にアンケート調査に参加してもらい、その他の産業医、衛生管理者については無作為抽出によりアンケート対象をえらんだ。
 今回はその両者を区別しないで集計した結果について報告する。

3.結果と考察

1. 産業医の衛生委員会への参加等

 47.0%が出席しており、出席していない理由の86.4%が案内がないという理由であった(図1)。
 出席率は予想以上であり、案内があればまだ出席率が上昇する予感がある。ただし、年に一回以上の出席がアンケートの要求であった。
 衛生委員会での討議内容で、産業医、産業看護職と衛生管理者の回答で目立った差はメンタルヘルスの問題であった(表1)。なお、産業医の重点活動分野・課題は表1に示した。



表1:衛生委員会及び産業医活動(複数回答)
衛生委員会協議・検討内容(%、左)
産業医重点活動分野・課題(%、右)
わからない 0.0 13.8
健康診断 66.7 55.4
健康・衛生教育 66.7 32.3
健康相談 61.1 52.3
職場巡視 68.5 25.4
作業環境の改善 38.9 9.2
作業方法の改善 16.7 2.3
健康保持増進対策(THP) 16.7 7.7
健康障害の原因調査 3.7 0.8
外部委託健診機関の選択・評価 16.7 6.2
ストレス等のメンタルヘルスケア 37.0 6.9
産業看護職 30.6
衛生管理者 14.9
女子従業員の健康管理 13.0 4.6
快適職場づくり 25.9 2.3
健康づくり 46.3 22.3
高齢者対策 5.6 2.3
過労死 9.3 1.5
安全対策 22.2 1.5
常勤以外の従業員の健康管理 9.3 1.5
その他 0.0 0.0
2. 健診以外の産業医活動への取り組み

現在の産業医活動に満足しているとの回答は衛生管理者に高く、産業医、産業看護職に低い。
実際に担当している者の満足度が低いのは将来はさらに充実させたいとする願望を持つものが多いことを意味するものと考えられ、満足度が低いのは問題としても将来の希望をつなぐことができる。


産業医活動についての問題としてあげられたのは経営者の姿勢、従業員の理解不足であった。


3. 産業医報酬の妥当性についての判断

  1. 産業医の22.6%が満足している、衛生管理者で妥当と判断してるのは34.0%である。
  2. 産業看護職は最も見方がきびしく、高額とするものが39.6%に達しており低額としているものは6.3%にすぎない(図3-1、2)。
  3. これらの判断のくいちがいをどのように解釈し、どのように考慮すべきかは今後の問題であろう。しかし、産業医の22.7%が満足と答えているのは、私権になるが相当の進歩がこの面でもあったものと考える。



4. 産業医活動による事業所のメリットディメリット

メリットは三者とも従業員の健康向上、健康の把握可能、職場環境の改善を主たるものにあげていたが、産業医、産業看護職では医療費削減、衛生管理者では生産性向上を次にあげている点が異なっていた(図4)。


ディメリットは三者とも経済的負担の増加、わからない、時間的負担の増加を主たるものにあげ同様の傾向であったが、衛生管理者でわからないが高く異なっていた(図5)。



4.結論


  1. 種々の問題を含んでおり、また企業による跛行性が大きいにせよ、産業医活動は我々の予想より速いテンポで定着しつつあると考える。
  2. 今後の問題として、図のような問題点の解決と産業医、産業看護職、企業の姿勢について一層の努力が必要であろう。
  3. 労働安全衛生法にもられた産業医の職務を実施するためには、500~1000人について一名の産業医が、少なくとも週に数日はそのための時間を確保する必要があると推定される。
  4. それに対応するだけの産業医報酬を保障する努力が、産業医、企業の双方に求められる。