産業保健調査研究

主任研究者 香川産業保健推進センター 相談員保健婦 脇谷 小夜子
共同研究者 保健婦 多田 鈴子
 〃 梁木 久美
 〃 渡部 和代
 〃 妹尾 洋子
香川医科大学・人間環境医学講座 實成 文彦
武田 則昭

1.はじめに

 1993年の日本たばこ産業㈱の全国たばこ喫煙者率調査によると、我が国の20歳以上の喫煙率は男性59.8%女性13.8%である。 アメリカは30%(1987)、イギリスは36%(1984)であり、日本は他の先進国の中で群を抜いて喫煙率が高い。日本においても喫煙に関する問題や嫌煙権等の問題が表面化してきている。

 また、企業においても社員の健康づくり運動や、快適職場作りの育成等が叫ばれるようになり、その中で喫煙に関する問題も取り上げられるようになってきている。

 そこで、香川県内の喫煙対策活動の実態を把握するとともに、企業内における喫煙対策活動に影響を与えているものを探求するためにアンケート調査を行ったので、ここに報告する。 この調査結果が今後の喫煙対策活動の方向性を見出す一助となれば幸いである。

2.調査方法

  1. 調査機関 平成7年1月~2月
  2. 調査内容 アンケート表
  3. 調査対象 香川県内の50人以上の従業員を有する事業所
  4. 調査方法 郵送式アンケート調査
  5. 回収率 436社/823社 (回収率 53.0%)

3.結果と考察

1.回答事業所の概要(業種別)

2.喫煙率の実態把握状況

3.喫煙対策活動の実施状況

何らかの喫煙対策活動を約半数の事業所が実施または計画中である。
看護職の在籍する事業所の方が在籍しない事業所より、喫煙対策活動を実施または計画している割合が高い。

4.喫煙対策活動の実施内容

喫煙対策活動の内容は喫煙制限が一番多い。
看護職の有無で実施内容をみてみると看護職のいない事業所は喫煙制限の実施のみに偏っているが、看護職のいる事業所では喫煙制限だけではなく 禁煙ポスターの配布や禁煙コンテスト等の実施、禁煙教室等を実施しており、看護職の独自性が(指導者が積極的に仕組まないとできないこと)伺える。

5.喫煙対策活動実施の動機と効果

喫煙対策活動実施の動機としては(複数回答)「社員の健康のため」(53.5%)が一番多く、次いで「オフィス環境の改善」(48.0%)「非喫煙者からの要望」(48.0%)「火災等の事故防止」(47.0%)となっている。
また、喫煙対策の活動の効果としては(複数回答)「オフィスがきれいになった」(50.0%)が一番多く、次いで、「喫煙率の低下」(32.7%)「仕事の能率が上がった」(18.3%)が上げられている。
このように、喫煙対策活動の動機と効果は必ずしも一致していない。

6.喫煙対策活動上の障害

喫煙対策活動上の障害としては(複数回答)「個人の喫煙意識の低さ」(51.5%)が一番多く、次いで、「喫煙場所のスペース不足」(32.2%)があげられている。 「個人の喫煙意識の低さ」と「管理職の喫煙意識の低さ」(19.8%)と「喫煙者が多数はだから」(21.3%)を合わせると、かなりの割合で、活動上の障害として人的要因を上げている。
このことより、人に対する対策が重要であることが分かる。

7.喫煙を制限しない理由

喫煙を制限しない理由においては(複数回答)「個人的な嗜好の問題だから」(36.6%)が一番多く、「社内に意識がないから」(22.0%)も高い割合を占めている。喫煙に対する個人及び会社の意識の低さが伺える。
また、仕事の能率低下のため対策を取らない所がある一方で、仕事の能率が上がったという効果を得ているところもある。

8.喫煙対策活動の必要性

喫煙対策活動を実施している事業所は全体の約5割で、喫煙対策活動を実施していない事業所の約7割は実施の必要性を感じている。両方を加算してみると喫煙対策活動が必要であると感じているのは、全体の8割を占めていることになる。

4.おわりに

 今回の実態調査により、香川県内の企業の喫煙対策活動の取り組みが明らかになってきた。今後は、具体的にどのような対策を実施できるか。ということが課題である。現在は、企業内での喫煙対策活動のマニュアル作りに取り組む等、引き続き検討中である。