産業保健調査研究

主任研究者 香川産業保健推進センター 相談員 武田 則昭
共同研究者 香川産業保健推進センター 所長 影山 浩
香川産業保健推進センター 相談員 千野 和男

1.はじめに

 職域における健康関連諸問題(トラブルと予防対策状況)を中心に疫学の3要因や1~3次予防の観点から浮き彫りにできる調査票の開発を試み、香川県下の事業所で平成12年2月中旬に香川県下の50人以上の従業員がいる(平成11年度)944全事業所に対して、郵送法にて調査票を送り、2月下旬までに返送、回収する方法で行った(回収率41.6%)。
 併せて、現状や問題点の分類・整理を可能にする指標化、データベース化についても検討した。

2.対象と方法

 調査内容は、調査票開発の項で一部記載したが、6大項目(Ⅰ.回答者の背景、Ⅱ.事業所<企業>の概要、Ⅲ.健康・病気問題に関わるトラブル、Ⅳ.定期健康診断に関わるトラブル、Ⅴ.産業医の職務に関するトラブル、Ⅵ.トラブル全般)44項目で構成した。
 クロス集計は事業所の規模(50人未満、50~100人未満、100人以上)、従業員の平均年齢(30歳代、40歳代以上)、業種(製造業、それ以外)、業務内容(<危険物取扱いの有無>、<有機溶剤・特定化学物質取扱いの有無>、<VDT作業の有無>、<高所作業の有無>)、トラブル発生状況(<事業所内での有無>、<事業所内外での有無>)と各項目でクロスし、集計を行った。
 単純集計結果については、カイ二乗検定を行った。
 なお、4分表でセル内の標本数が5未満の場合はFisherの直接確立法を行った。

3.結果と考察

Ⅰ. 調査結果
① 健康・病気問題に関わるトラブル
  1. トラブル発生状況で「ある」は1割強
  2. トラブル予防策実施状況で「講じたことがある」は7割弱
  3. トラブル予防対策への積極性で「積極的」は2割弱
  4. トラブル対策の専門部署配備で「配備している」は3割弱、半数近くが今後
  5. トラブル予防策の優先アプローチ(予防の5段階、本調査の核の一つになる結果)で第1優先は特殊予防型の1次予防重視が5割強、体質改善・前向き積極型の1次予防重視が4割弱と1次予防型が大半を占めており、第2、3優先は早期発見・早期対応型の2次予防重視が4割前後
  6. 起こりやすいトラブルで「定期健康診断などによる健康管理」5割弱、「対人関係」4割弱、「こころの健康」3割
  7. トラブル予防対策で不十分な事項では人、物、システム、資金・財政、法・制度の順
  8. トラブル予防対策で必要な事項(人材、設備・環境、制度・システム、資金・財政)は人材では「管理職の倫理・衛生教育」、「従業員間のコミュニケーションの充実」、「労働安全意識の高い労働者の育成」、「トラブルに関して適正処理能力を養う」、「事業所内にトラブルを専門に扱う人の配置」、「専門家による倫理に関する社内教育」。
  9. 設備・環境では「事業所内での充実・整備」、「事業所外の実態把握」、「福利厚生施設の充実・整備」、「問題処理に利用できるソフトの充実・整備」、「事業所内における計画策定」。
  10. 制度・システムでは「事業所内のコミュニケーションの充実・強化」、「継続的かつ計画的な推進活動」、「労働災害防止計画」、「労働安全マネッジメントシステム」、「環境管理システム」、「スタッフの意見を反映させる体制づくり」。
  11. 資金・財政では「事業所内の関連予算の充実・確保」、「関連資金・財政に関する事業所外での情報・意見交換」、「休業補償給付の充実」、「療養補償給付の充実」、「各種助成金の利用」などであった。


② 定期健康診断に関わるトラブル
  1. 健康診断で起こりやすいトラブルは「健康診断結果に基づく健康管理・指導」、「健康診断に基づく病気の管理・指導」、「健康診断に基づく就業上の措置」、「健康診断結果の精度」。
  2. 定期健康診断で経験したトラブルは「ない」8割、「わからない」1割強であった。
③ 産業医の職務に関わるトラブル
  1. ラブル対策における産業医の職務は「健康診断結果の評価」「健康教育、健康相談」、「健康障害の原因解明」、「健康障害の再発防止」
  2. 事業所外のトラブル予防に関する産業医の職務は「職場巡視」、「健康障害の原因調査・解明」、「労働衛生管理体制の整備」が5割前後
  3. トラブルを起こさないための健康管理実務における産業医の重要職務(健康管理、作業環境管理)で健康管理は「健康管理」、「健康相談」、作業環境管理は「快適職場の形成」、「作業環境の測定及び評価」
  4. 健康管理上で起こりやすいトラブルは「中高年者の健康管理」、「メンタルヘルスケア」、「健康教育・相談の事例」、「女子の健康管理」、「健康づくり」、「心身障害労働者の健康管理」、「単身赴任労働者の健康管理」、「健康管理活動の評価」などであった。

④ トラブル全般
  1. トラブル発生予防システム、制度は「今のところ整備していないが、今後は必要と考える」7割弱、「すでに整備している」2割強、「今のところ整備しておらず、今後も必要と思わない」1割弱
  2. トラブル早期発見方策(システム、制度)で早期発見・早期対応のシステムや制度は「今のところないが、今後は必要と考える」7割、「すでにあり、講じている」3割弱、「今のところなく、今後も考える予定なし」1割弱
  3. トラブルの早期発見・早期対応システムの準備状況は「今のところないが、今後は必要と考える」7割、「すでにあり、講じている」3割弱、「今のところなく、今後も考える予定なし」1割弱
  4. トラブル発生時の委員会等整備は「衛生委員会」、「安全委員会」
  5. トラブル防止重点施策は「健康管理」6割弱、「健康診断の充実」5割強、「労務管理」4割強、「作業管理」4割、「安全衛生教育の充実」4割、「環境管理」4割弱
  6. トラブル対策組織構成時のスタッフは「産業医」8割弱、「部長・課長など上長」8割弱、「労働衛生管理者」7割弱
  7. トラブル解決時の相談機関・組織は「労働省、労働基準局、労働基準監督所」7割強、「病院・診療所」5割弱
  8. トラブル再発防止システム、制度は「今のところないが、今後は必要と考える」7割強
  9. トラブル解決アプローチで1番目に原因対策の「トラブルの原因究明に対するアプローチ」5割弱、環境要因対策の「トラブルが起こった現場や環境に対するアプローチ」2割強、宿主要因(得ったられる側の人、組織)対策の「トラブルのひだね(火種)になっている側の人や組織に対するアプローチ」2割弱、宿主要因(訴える人、組織)対策の「問題を指摘したり訴えたり、問題として取りあげている側の人や組織に対するアプローチ」1割強
  10. トラブルに対する今後の取り組みは「要望があれば取り組みたい」5割弱、「積極的に取り組みたい」2割強、「わからない」1割強
  11. 職場トラブル解決マニュアル、ビデオ、コンピュータソフト等の必要性は「はい」4割弱、「わからない」4割弱、「いいえ」
  12. 職場トラブルに関するデータ整理、データベース化の必要性は「はい」4割強、「わからない」4割弱、「いいえ」2割強
  13. トラブル増加は「はい」3割弱、「いいえ」3割弱、「わからない」5割弱
  14. トラブル対策の今後の重要性は「はい」6割強、「いいえ」1割弱、「わからない」3割弱
  15. トラブル対策における今後の重要事項は「生活習慣病」7割弱、「労働災害」5割弱、「こころの障害」4割強、「産業廃棄物」4割強などであった。

以上の多くの事項で業種、業務内容およびトラブルの経験別に特徴があり、違いがみられた。



Ⅱ. データベース化の試み

 職場の健康問題等に関するトラブルについて疫学の3要因、疾病に対する1,2,3次予防の概念を組み合わせ、検索エンジン等で抽出、分類できるデータベース化が可能になった。
 さらにそれらのデータベースをもとに、トラブルバスターの開発が可能な状況になった。